「永遠の0」 文庫編

 映画を見終わって同じフロアーにある本屋さんで「永遠のゼロ」文庫本を買いました。二日かけてそれを読み終わり、映画を見て、原作を読む、この順序が正解だなぁと思います。本の方も読み応えがあり映画では語られなかった部分に作者のもう一つの主題が隠れていました。

 ハワイ真珠湾からミッドウェー、南太平洋、ラバウル、ガダルカナル、サイパン、フィリピン、沖縄と、太平洋を舞台に繰り広げられた4年にわたる日本とアメリカとの戦争、緒戦は有利に進められたのがアメリカの底力に押され劣勢を余儀なくされていった戦争中盤から終盤、敗色の濃くなっていく理由は何か。

 この小説はフィクションながらその骨格は史実をベースにしています。主人公は架空でも戦争の状況は作り事ではありません。特攻の事実を語る証言者が皆繰り返して述べる事は、エリートであるはずの参謀本部、司令部の高官たちの判断ミス、もしくは腰の引け様、事なかれ主義。

 ミッドウエーでも、わしら零戦隊は敵の基地、空母の艦上機を百機以上撃墜した。あの海戦の負けを作ったのは南雲、それと源田だろうね。

 特攻で亡くなったのは、ほとんどが予備学生や年若い飛行兵達だった。・・卑怯なのは俺も後から行くと言って多くの部下に特攻を命じておいて、戦争が終わるとのうのうと生き延びた男達だ。

 真珠湾攻撃の時、現場の指揮官クラスは第三次攻撃隊を送りましょうと言ってるのに、南雲長官は一目散に逃げ帰っている。

 珊瑚海海戦でも、敵空母のレキシントンを沈めた後、井上長官はポートモレスビー上陸部隊を引き上げさせている。

 ガダルカナル緒戦のソロモン海戦でも三川長官は敵艦隊をやっつけた後それで満足して敵輸送船団を追いつめず撤退している。

 日本軍にもう一押しされていたならやられていた戦いは相当あったよう。その極めつけがレイテ海戦の栗田長官の反転。


 こうした事に対し作者は登場人物の口を借り、

 将官クラスは海軍兵学校を出た優秀な士官の中からさらに選抜されて海軍大学校を出たエリート達、選りすぐりの超エリート、ゆえに弱気だったんじゃないか、・・・彼らの頭の中には常に出世という考えがあったような気がしてならない。

 長官クラスは海軍に入ってからずっと実戦を一つも経験せずに海軍内での出世競争の世界だけで生きてきた・・・つまり試験の優等生がそのまま出世していく、今の官僚と同じ、大きなミスをしなければ出世していく。

 特攻は九死に一生ではなく十死零生の作戦。全機特攻を唱えた宇垣長官が出撃を前にした隊員に訓辞した後質問を聞いたところ、「敵艦に爆弾を命中させたら戻ってきても良いでしょうか」と尋ねたら「ならん」といい放った・・・。


 もう特攻兵士は上層部から見たら消耗品だったと語らせています。さらに加えて、この戦争を煽ってそう仕向けたのは、日本をあんな風にしてしまったのは新聞記者達だ、と、

 戦前、新聞は大本営発表をそのまま垂れ流し戦意高揚記事を書きまくった。戦後はGHQの命じるままに戦前の日本がいかに愚かな国であるかを書きまくった。自分こそが正義と信じ、民衆を見下す態度は吐き気がする。 

 文庫で600ページ近い長編ですが、映画のストーリーだけだったら半分で済むのではありませんか。それをこれだけの長さにしたのは、作者が特攻の背景を資料を基に丁寧に説明したかったのだと思います(最後の参考文献一覧があります)。それでも本当はまだ足らないのでしょう。

 欲張っても仕方ありません。映画でスタッフとキャストが作り上げた物語を見て、観客が70年前にあった近現代史を知り、多くの尊い犠牲の上にあるにも拘わらず危うい現在の平和と、この行く末を考えるきっかけとして、これはそのまず一歩、一冊なんだと思います。

 映画、本ともよく売れているようですが、批判する人達もいます。彼らは日本人が自立してしまうのが困る人達ではないかと、やくみつるの様に中国に侵略されても抵抗しません、という平和へたれを育てて来たのに、「違うだろう」と言う声があがってきて慌てているんじゃないかと思えます。


 幾つかあるキーワードのひとつに「不時着」があります。これは特攻が志願か強制かという課題とも絡んできますが、少なからずあった未遂、未帰還という事実もあります。日高恒太朗著の「不時着」という特攻を扱ったノンフィクションが2004年に発行されています。

 さらにこの問題について掘り下げるには良いテキストです(新人物往来社 1800円+税  文春文庫 752円)もう古本でしか手に入らないかも知れません。出撃して生き残った人の生の声が残されています。新潮文庫の「今日われ生きてあり」(神坂次郎著)も併せて参考になります。


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 もう2月。早いですねぇ。



 

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