「グレート ギャツビー」 F・S・フィッツジェラルド

 1ページを2~3日かけて読み続けるという読書、毎日15分~20分くらい。場所はトイレ、小さな物置台を作ってその上に本を置いてあります。今回の本は200ページほどですから1年半くらい掛かりましたか。題名は「グレートギャツビー」

 台の上にある本は3冊、ペンギンブックス版と村上春樹訳の中央公論社版、野崎孝訳の新潮文庫。それに辞書。英語版を翻訳版と交互に読み進めるというトイレ読書はこれで6冊目ですが、原作を、作者の意図をじっくり味わうのにこの読み方は悪くない。

 
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 本当は辞書片手に読み進められたら良いのですがそこ迄の英語力はない。読めたとしても多分ネイティブでなければ理解出来ないような所が多々出て来ていびつな理解の読書になってしまう可能性。翻訳書の手助けがあって読了出来ます。

 若い頃に村上春樹の「風の歌を聴け」を読んで、その後にこの英訳本が出たので買って読んだ時、随分違和感があって楽しめなかった事がありました。翻訳は訳者次第であり、日本人の感覚を米国人が英語に訳す難しさを感じたわけです。

 逆に日本人が訳す英語の作品は、ネイティブから見たら矢張り違和感を感じるものであろうと、ま、そこが翻訳の難しさ、訳者の苦労する所でもあるんでしょうが、少しでも原作の雰囲気をそのまま味わえないものかと、無謀にも試してみたのが始まり。

 結果、翻訳者の努力の上に乗っかってではありますが、多分、翻訳を読んだだけの読書と、原作と付き合わせて読む読書とでは味わい、理解に違いがあると感じます。今回のように2冊参照しながら読むと、その差異も興の乗る所です。

 この小説はギャツビーという西部の貧農育ちの若者が、東部に出て来てデイジーという上流階級の娘と知り合い恋をする。第1次大戦に従軍し武功を立てるもその間にデイジーはトムという大金持ちと結婚をしてしまう。

 彼女を取り戻そうとギャツビーは成り上がり、ニューヨークの海峡を挟んで向かい合うイーストエッグに住むトムの邸宅に対抗し、ウエストエッグの大邸宅でデイジーを迎える時を待つ。その恋の行方をたまたま隣に引っ越したニックという若者の目を通して語られます。

 本3冊と、加えてDVDが2本、1974年にアカデミー賞も得たロバート・レッドフォード主演作と2013年のレオナルド・デカプリオ主演作。読み終えた後に、30分ほど視聴して中止していた2013年版を鑑賞、各シーンの意味もつながり楽しめました。

 
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 訳本2冊、共に翻訳者が解説、後書きを書いていますが、これが通常からすると結構長い。野崎孝訳は1950年代に一度訳し、1974年に再度訳したものの文庫版。解説を読む事で作者フィッツジェラルドのこの物語を書いた意図、意味が見えて来ます。

 村上訳の方は更に長いあとがき、ここで外国文学を翻訳する事について彼の思いを語っています。彼はこの本を人生の中で巡り会った重要な3冊のうちに挙げ、若い頃から60代になったら翻訳しようと考えてきたと云います。
 
 それだけ思い入れの強い作品ですから翻訳にも力が入る。同時に翻訳する事で、フィッツジェラルドが28歳の時にものにしたこの傑作の美点が失われていくという危惧も訳者は述べています。だから原文で読んで貰うのが一番良いとも書きます。

 そうだなぁと同意します。ただそれは語学力があってなせる業、更にこの小説で言えば1920年代のアメリカ、ニューヨークという時代背景への理解が無ければこの作品の深みは読み取れません。翻訳とはその橋渡し、単語の直訳だけでは翻訳にならない。

 そういう翻訳の限界を判って村上春樹は、

 ・・これほど美しく英語的に完結した作品をどうやって他の言語に欠点なく移し替える事が出来るだろう?・・

 ・・それでも一人の翻訳者として、小説家として、「グレートギャツビー」という作品の根幹をなす一番大事な何かを、そのエッセンスのようなものを、少しでも有効に、少しでも正しく伝える事の出来る翻訳の道筋を見出すべく、精一杯努力をし誠意を尽くした・・

 そう書いています。これが翻訳の難しさ、課題、そう思って原本を読み始めたわけですが、翻訳の助けを借りなければ原作を味わう事は出来ない訳で、両翻訳者の苦闘の成果を囓りながら時間をかけて原作を読み通す事が出来ました。

 ペンギンの本の帯に「TOEIC目安スコア 700~」なんて書いてありますし、村上春樹も書いていますが、この本の第1章書き出し部分と最後の章は定評のある名文で、訳すにあたり最も心を砕き腐心したというように、いきなり立ち往生。

 最後の章の最後の文章は、野崎孝の解説でその意味が判りました。訳本の本文だけでも判らない。あとがきの注釈があって理解出来ます。辞書片手だけでは読んだ事にはならないように、アメリカの時代背景、歴史も加味しないと味わえません。”

 DVDもう一つのレッドフォード版は余韻が引いたしばらく後で見る事にします。デカプリオ版の付録に監督のインタビューがあって、尺の関係で省いた所やキャスティング、主題についての解説。この小説がアメリカ人に愛されている事がよく判ります。

 
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 今日は寒さが戻って、雪になるのか、雨なのか。曇り空。

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